2016.10.26 Wednesday

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2016.09.27 Tuesday

ほうろく菜種油の品質について 【カニ泡を考えます】

菜種油の品質について

文:()りんねしゃ 飯尾裕光

 

菜種油 黄金色の不思議

 

 ほうろく菜種油の色は、原料・天日干し・薪火ほうろく釜焙煎・低速低圧搾油・湯洗いなし・強制ろ過なしという、手間と労力を惜しみなくかけることによって黄金色に輝く、まるで菜種の花のようになります。しかし、原料菜種の栽培地、品種、その年の気候条件などによって色が褐色になる場合があります。

 

黄金色に輝くほうろく菜種油の色そのものが、お客さんにとっては品質の証のように感じていただけることはとても喜ばしいことです。しかしながら、原料による色の変化を黄金色に変えることはできません。使っていただく際に不安を与えないよう、色の変化が、実際にどのような差につながっているのか、成分分析調査も行いましたが、黄金色の場合と、茶褐色の場合とでは一切の差が見つかりませんでした。

 

 ほうろく屋として多くの菜種を絞っていく中で、科学的な知見ではなく経験として感じていることがあります。それは、菜種の品種も考えられますが、何よりも交雑によるものが大きいような気がしています。菜種はアブラナ科ですが、多品種間交雑が頻繁に起こることでも知られています。つまり、菜種栽培地域にて生産される、同じアブラナ科の野菜などが原因ではないかと感じています。また、アブラナ科は原種がえりしやすく、種の採取と再播種を繰り返すと、エルシン酸含有量が増えてくるとも言われています。つまり、原種帰りすることで、種子の成分に何らかの変化が起き、結果として油分褐色を引き起こしているとも考えられるのです。科学的な根拠ではなく、あくまでも毎日のように油を搾る作り手の経験からくる想像ですので、根拠はありません。しかし、職人として油に向き合う中、このような感覚はとても大切です。

 

 菜種油がいつもより茶色いなどのご意見をいただくことがありますが、現状は品質・味とも差がないことを確認しています。黄金色の油のみを抽出し販売することは、製造コストや菜種の生産者の苦労、そして何より「最高級の菜種油」を広め、食べてもらいたいものとして、「色」を重視しすぎることによって自らの首を絞めるようなことはできません。茶褐色の色が、決して焦げてしまったものであったり、劣化しているものではないことを保証し、国産菜種の圧搾搾り油の特性として、一緒に学びながら食べて支えていただきたいと思っています。

 

菜種油 かに泡の不思議

 

 圧搾菜種油で問題になることの一つとして、とんかつやコロッケなどの揚げ物調理の際に発生するかに泡という現象があります。油が古くなると泡が出やすくなることはよく知られていますが、圧搾菜種油は新しいときによく起こる現象です。ひどいときは、まるで洗剤が泡立つように盛り上がり、お鍋から泡があふれだすこともあります。その結果、家事などヒヤリとされる方や、キッチン周りが油だらけになってしまうこともあります。

 

 

実は原因は全く分からないというのが現状です。特に、パン粉や片栗粉などの細かなものが投入された時にひどくなるようです。また、泡が発生した場合、すぐに火を止めても泡は収まりません。残念ながら油の中の食材をすくいとるしか、泡を抑える方法はないのです。ほかの油を混ぜることで抑えられるという話もありますが、量の問題、種類の問題も明確ではなく、一概に言い切れません。

 

このカニ泡現象を抑えるために科学的な手法では「消泡材」や「シリコン」の添加があります。また伝統的な手法としては「湯洗い」を行うことによって、確実に解決できるのです。ほうろく菜種油においては添加物を使用するという選択肢はありませんので、消泡材やシリコンのメリットデメリットは、ここで述べません。実際には、ほとんどの圧搾搾り菜種油で湯洗いの手法がとられています。

 

 では、なぜ湯洗いが必要なのでしょうか?それはカニ泡の原因ともいわれる、微細な不純物が油に含まれるからです。この微細な不純物は、通常の圧搾搾りの場合、ろ過しても取り除く事が出来ません。そこでお湯と油をませ合わせる事によって起きる自然な化学反応(料理でアクが出るのと同じような原理)を利用し不純物を取り除くのです。油と水は溶けませんので、最終的に遠心分離にかけ、油だけを取るのです。この工程を繰り返すと油の中の不純物がへり、サラダ油のようなあっさりとした無臭の油になっていきます。ノルマルヘキ酸を使った薬剤抽出の場合、そもそも不純物が溶出しないので湯洗いの必要はありません。ノルマルヘキ酸溶出は効率よく搾油するための方法としてもっとも一般的になりましたし、安価で生産可能になるのです。この薬剤は加熱することで無毒化すると言われており、油を何度も過熱し、含有量をなくしてから商品化されます。

 

 湯洗いにしても薬剤抽出にしても、「不純物の除去」精製が欠かせないと言われますが、本来の菜種油に含まれる旨みや栄養分も「不純物の一部」として除去される事になります。そして何より、加熱を必要とする精製過程で、油の酸化(劣化)はいやおうなしに進んでいきます。微細な不純物は、焙煎温度や急速な焙煎、コンピューターで時間管理された焙煎などの効率化された焙煎工程では防ぎようがないと言われます。なぜなら、搾油量向上のためにも、限りなく焦げる直前まで焙煎を追求するからです。すると結果的に表面が焦げ付き、フィルターでもろ過できないほどの細かな不純物として油に残ってしまうのです。本当はカニ泡の原因になるような微細な不純物を出さない方法で搾油すればいいというのが、ほうろく菜種油の技術的特徴であり、作り手としての「美味しい油」「強い油」「体に良い油」を求めるこだわりなのです。本当に丁寧な搾油工程を行えば、不純物が初めから入りません。ほうろく屋の焙煎前から始まる天日干しをはじめ、薪火を利用した少量焙煎、少量の圧搾に至るまで、すべては「不純物」を入れない油を搾るための製造工程なのです。

 

しかしながら、そこまで焙煎圧搾にこだわってもごくまれにカニ泡が出てしまう油が出来上がります。これは、購入者が火をかけ、揚げ物をしたときにはじめてわかるので、出荷前から判別できないのが現実です。ここまで注意を払ってもカニ泡が出てしまう理由は、ほんとにわかりません。ここでも、生産から搾油、そして自身が消費する中で得た経験から憶測することしかできないのが現状です。では、なにが原因なのでしょうか。それは、菜種油が茶褐色になってしまうのと同じように、種子に何らかの変化が起きていると考えています。難しいのは、色が茶褐色だからといって必ずカニ泡が出るわけでもなく、また、カニ泡が出る黄金色の菜種油もあるという事です。

 

 

手仕事にこだわることの難しさ

 

食品すべてに言えることですが、作り手のこだわりと食べてのこだわりがすべて合意されて続いていくなどという事は、ほとんどありません。ましてや、今の社会構造のように、高効率と高収益の追求が目的のようになってしまうと、工業製品のように同一規格を前提としたもの以外は、常に価値観と現状認識の食い違いによって問題が起きていきます。人間の管理能力がいくら工場しても、自然界で起きることすべてをコントロールできません。その変化や裏切りすらも楽しむ、もしくは受け入れるという姿勢があるのかないのかが、最終的に問題解決に必要になります。僕は、それを「多様性」と呼ぶし、それだからこそ「持続可能」であると思うのです。

 

 今回、このような文章を書いた理由は、決してほうろく菜種油の課題や問題について開き直り、我慢を強要する為ではありません。私たちの正当性が、皆さんにとって受け入れがたい場合があることも理解しています。それでも、いま、解決できない事がわかっている中で、現状をしっかり認識し互いの学びにまで昇華させなければ、本当の意味での「こだわり」を追求する姿勢ではないと思います。

 

 できる事とできない事をしっかりと学び、そのうえでお互いの価値観を共有できるのであればそれほどうれしいことはありません。もちろん、私たちも菜種油の「色」と「泡」の課題解決をあきらめず、かといって安易な方法に陥らないように考え続けなければなりません。皆さんの食卓に安心と安全の菜種油を届けることにこだわっていくと、作り手と使い手の想いを合わせて支えあうことでしか解決できない事もあるのだという事も、しっかりと伝えていきたいのです。たかが「色」と「泡」の問題にすぎませんが、私たちが解決する姿勢を持ち続けるとともに、皆さんと一緒に、このことから「食べもの」とはなんであるのかを、または生産者と消費者の分断された関係を考える機会にしなければならないと思っています。

 

ほうろく油で揚げる餃子

 

 

 

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